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【#私はこんな仕事がしたい展】トークセッションレポートvol.7:「若手フリーランスクリエイターの生態」

【#私はこんな仕事がしたい展】トークセッションレポートvol.7:「若手フリーランスクリエイターの生態」
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2019年11月29日(金)より3日間に渡って開催された「#私はこんな仕事がしたい展」。その中で行われた8つのトークセッションの模様をひとつずつお届けする不定期連載、今回はその第7弾です。

■猪瀬まな美さん×吉田佳寿美さん「若手フリーランスクリエイターの生態」

トークセッション第7弾は、ノラネコデザイン猪瀬まな美さんと、EMOGURA吉田佳寿美さんのお二人。お二人には、クリエイターとして活動し始めて早い段階でフリーランスという働き方を選んだという共通点があります。

■登壇者のご紹介

猪瀬まな美さん
2012年夏、ノラネコデザインとして独立。
広告、ロゴ、パッケージなどのグラフィックデザインやイラスト、撮影の美術セット装飾と小道具造形を中心に、イベント企画運営や司会、広報、SNS運営、子供の工作ワークショップの実施、作詞作曲など、​ジャンルを問わず「コミュニケーションのデザイン」に関わるプロジェクトに従事している。

吉田佳寿美さん
高校2年生時からイラストレーションや商業デザインをメインに、ソーシャルやイベント系の企業や、個人クライアントから制作を受注。 2012年九州産業大学芸術学部デザイン科特待枠で入学。 2015年度から武蔵野美術大学視覚伝達デザイン3年次に編入、中退して2016年グラフィックデザイン制作会社EMOGRA.inc設立。 リアルイラストレーションからデフォルメ、デザインまで見た物を応用して新しく作り出し、美しさや魅力的な理想を追い求める。

■なぜ「フリーランス」という道を選んだのか?

かなり早い段階でフリーランスという生き方・働き方を選択したお二人。その背景にはどのような経緯や考えがあったのでしょうか?

吉田佳寿美さん(以下、吉田):地元の九州産業大学芸術学部に学資免除で入学しましたが、「このまま大学に4年間いてもフリーランスでやっていくのが厳しくなる」と感じて1年生の時に見切りをつけました。女子の平均年収が福岡だと手取り14~15万だと知り、高校の学資や大学の生活費など自分で賄っていた金額を考えると恐ろしく感じてしまったんです。それなら独立した方が夢がある、東京に行って仕事をした方がいいはずだと思い、2年生で中退しました。そのまま上京して武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に編入し、平行して仕事をしていたんですが、しばらくすると仕事が忙しくなりすぎて「学校を取るか、仕事を取るか」という状態になってしまって。私、不器用すぎて仕事を抱えすぎてしまうんです。人に話してみたら「30代になってから大学に行ってもいいんじゃない?」というアドバイスをもらったので、それで武蔵野美術大学も中退することに決めました。

猪瀬まな美さん(以下、猪瀬):私は多摩美術大学を卒業後、就職活動を経てクリエイティブエージェンシーに入社しました。その際に社長から「デザインだけを極めるのではなく、デザインを作る前のプランニングの段階、“デザインの仕事がどう生まれてくるのか”を先に学んでおいた方がいい」とアドバイスされ、デザイン業務をやりながらアシスタントプロデューサーとして広告やPR、バラエティー番組の企画やコンサルなど、幅広い経験をさせていただきました。メールの書き方さえ知らなかったところから、本当にたくさんのことを学ばせていただき、とても感謝しています。
その後、会社の事情で組織が大きく変わってしまい転職することになったのですが、会社を辞めたと知った友人が、「ちょうど外注できるデザイナーを探していたので手伝って欲しい」と仕事をくれました。
大学時代からフリーランスとしても活動していたため慣れており、スムーズに働くことができました。その中で「私は良くも悪くも自分の意見をはっきりと言えてしまう人。会社員には向いていないかも。」と改めて気づき、個人事業主としてやっていく決意を固めました。その後も仲の良い先輩や友人が様々な案件で声をかけてくださり、仕事が仕事を呼ぶ形であっという間に7年目を迎えることができました。

■キーワードの掛け合わせで肩書を作っていく

引く手あまたのお二人ですが、友人の紹介だけで今のような活躍があるわけではありません。オンライン・オフラインそれぞれでのアプローチはもちろんながら、その中でどのように独自性を確立していったのでしょうか?

猪瀬:私は個人のWebサイトやSNSなどを使っています。知り合いが多いので特にFacebookがよく見てもらえますね。Webサイトは検索から来る人も多くて、例えば私は茨城県古河市出身と記載しているので、それを広告代理店さんが見つけてくれて、地元のプロモーションに関わる大きな仕事を頂いた経験があります。意外と書いていない人が多いですが、出身地は書いた方がいいですよ、結構検索されていると思います。

吉田:どのワードが検索で引っかかるかわからないので、その「ワード」の数は増やしておいた方が良いですよね。プラス、その人なりの「特化したワード」があると、クライアントさんも絞り込みやすいと思います。

猪瀬:foriioでも作品に説明文が書けるので、そこにプロジェクト名やどんな依頼が来てどんな意図で制作したのかなどの詳細を書いておくと、何かしら検索に引っかかってくるんじゃないでしょうか。

吉田:Webからも問い合わせは来ますし、結構大きな仕事が来ることもあります。渋谷区などは別ですが、「〇〇市出身のクリエイター」で絞ると本当に2、3人しか出てこないんです。出身地や、転勤族なら廻った土地も全部書いておく。やはり地域の案件だと、地元にゆかりのある人に頼みたいという方が多いんですよね。地方自治体自体はあまり予算を持っていませんが、たまに国からシティプロモーション予算として大きな金額がおりて来たりします。

猪瀬:その場合、全国から大手を含むたくさんの代理店さんが入札し企画をプレゼンするのですが、選ぶ側としては納得できる理由や選ぶ意味が欲しいですよね。「地元出身」というのは、リリース時に市民の皆さんからも親しみを感じてもらえやすいので企画として強い。作り手側も、地元には思い入れがあるので、やりがいを持って頑張れますし、相互にwin-winな仕事ができますよね。出身地などゆかりのある地名を公表することで、良いマッチングに繋がると思います。

吉田:「地元」にプラスして、例えば私であれば、自分の特技を絵だけでなく「絵×〇〇」と表現するというように、特技と掛け算で表せるワードをどれだけ増やせるかも重要。それがその人のポジション、得意な仕事になっていきます。最初はなりふり構わず色々な仕事をして、ポートフォリオが集まっていくと、自分の得意、自分だけのワードが沢山出てくるはず。それを検索キーワードとして使っておくと、クライアントさんは見つけ出しやすいんじゃないでしょうか。

猪瀬:知識があるという意味では趣味でも良くて、「イラストレーターで電車が好き、更にDJもやっていてヒップホップが好き」など、自分のキーワードを掛け合わせたそれらのワード全てが揃う人となれば、かなり絞られますよね。「茨城県古河市出身のグラフィックデザイナーでワークショップやイベント企画、司会までやっている人」は、検索上、私一人しかいないんです。これは強みですよね。掛け合わせで自分の肩書きとなるような、唯一無二 の“独自性”を見つける作業は必ずした方がいいと思います。

吉田:個人的に、クリエイターはレッドオーシャンに飛び込みがちだと思っています。それが、日本の中でクリエイターの仕事が絞られてしまう原因にもなっている。自分だけにしかわからないブルーオーシャン、例えば農業や漁業など、あまりクリエイティブに関係のなさそうな、自分だけの“好きなもの”に飛び込む、その中で自分の仕事を増やしていくことも、これからのクリエイターにとって大切なことだと思っています。

猪瀬:あとは、やはりリアルな繋がりはとても重要ですね。今回のイベントのような様々な人が集まる場所に出向いて、恥ずかしがらずにきちんと挨拶して名刺をもらい自分の名前を覚えてもらうこと。一度会って話したことがあるというだけで、すごく連絡しやすくなるので。
Web上に“良い表情の顔写真”を公開しておくこともオススメです。 Facebookなどでもいいので少しでも顔が知れることで、「会った事はないけど良い人そうだし頼みやすそう」と思ってもらえるんじゃないかなと。私も発注側になることがあるので分かるのですが、クライアントも顔の見えない知らない人に突然メールをするのは結構勇気がいるし不安なんですよ。

吉田:過去のインタビュー記事から検索で飛んでくる人もいます。Web上に露出が増えるたびに増えているかもしれません。そういった、自分のことを開示した文章や、その人の人となりがわかるようなものがWeb上にたくさんあればあるほど、信用力が増す気がします。Twitterはその点、その人の周りの環境も含めて知ることが出来ますよね。自分の好きなものをどんどん載せていくのがいいと思います。

猪瀬:知らない人が自分の作品を何かで知って「どんな人なんだろう」と検索した時に、作品だけでなく写真や文章など好印象を与えられる素材がインターネット上に上がっていると、人となりが分かって問い合わせしやすいですよね。コラムや日記などでも良いと思います。

吉田:仕事は技術だけではなく人間同士のやり取り。「めちゃくちゃ上手いけど、めちゃくちゃやりづらい」というクリエイターさんはいますし、上手いから頑張ってその方に寄せるけど、納期を全然守らない、クライアントさんの要望を伝えても全然交渉に応じてくれないとなるとやっぱり困りますよね。実際会うとわかる部分も多いので、「ちょっと頑固そうだから気を付けておこう」など、その人の特技や傾向をきちんと掴んでから対応することもありますね。

猪瀬:何か案件がある時に“思い出して貰える”というのも重要です。一つの策として、自分のロゴやカラーなどを決めて共通したアイコンにしておくと、オフィシャル感が出て覚えてもらいやすいです。ノラネコデザインのカラーはイエローに白のキャラクターなのですが、WEBもSNSも名刺も全て統一しているので、初対面の人と名刺交換した際にも「SNSで見たことあります!」などと覚えていてもらえることも多く、打ち解けるのが早いです。記憶に残るためのブランディングは重要かなと思います。

■クリエイターたるもの、健康第一!

自分で自分をマネジメントする必要があるフリーランスという働き方。制作のスケジュールを崩さないためにも、如何に健康を維持するかがとても重要です。

吉田:基礎の基礎としては、規則正しい食生活、1日30分以上歩く、筋トレをする、そして睡眠を7時間以上とる。これらは大前提として、自分なりのリラックス方法を持つことも重要です。睡眠が大事な人、人と遊ぶことが大事な人など、人によって傾向が全く異なるので、自分なりのリラックス方法をきちんと掴んでおいてください。私も若い時は根詰めて頑張っていましたが、20代後半になって自己管理の大切さを痛感しました。

猪瀬:私も駆け出しの頃はいつも徹夜していました。大学時代に色々なアルバイトを経験しましたが、結構どこも無茶な働き方をしてて。そこでブラックな働き方に慣れてしまったので、独立した後も無理して仕事を受けすぎてしまい、納期を守るために何徹もして気合でなんとかしている時期がありました。でも最近は無理をしないように気をつけています。やりたい気持ちはあっても対応可能な納期かきちんと見極め、安請け合いせず計算してから仕事を受ける。無理をして体を壊したら、それこそ迷惑をかけてしまうことになりますしね。
また、同じレベルの技術を持った人と横の繋がりを持っておくのも大切だと思います。自分が「マジでヤバい!」という時に電話して「助けて欲しい!」と頼める繋がりがあるかどうか。もちろんお願いする時は有償ですよ、予算の中でやりくりしてバイト的な感じで手伝ってもらったりします。 フリーランスの人だけでなく、会社勤めの人に土日や夜の空き時間に手伝ってもらう場合もあります。
何かトラブルが起きた時にお互いに助け合える友人が何人か居れば、クライアントに迷惑をかけることなく納品できるので安心ですよね。ギルドチームなども流行っていますが、フリーランスはお互いに助け合える“協定”のような関係性を持つことも、とても重要だと思っています。

■「やりたくない仕事」こそ、飛躍のチャンス

限りある時間を使うのであれば、「やりたい仕事」だけをやりたいと考えがちなもの。しかし、自分の成長や経験値という観点も踏まえた金額設定と取捨選択の大切さがお二人の考え方には滲んでいます。

吉田:私は時給で換算して受注金額を決めていました。生活費と、自分の成長にかかる値段などの幅を決めて、それを時給で割って、それから工程数や材料費も鑑みて決めています。ちゃんと自分が制作するのに必要な費用の計算は出来ないといけない。そこがフリーランスのクリエイターは結構弱いと感じています。

猪瀬:私も独立したての頃に先輩から「自分の目標月給を決めた方がいい」 と言われました。自分はどんな場所に住んでどんな生活がしたいか?そのためにいくら稼ぎたいか目標値を決めて、それを労働時間で割っていくと金額が決まると。
ちなみにクライアントによっては納品請求から振り込みが2ヶ月後の場合もあるし収入の波もかなりあるので、半年くらい振込がなくても最低限生きていける程度の貯金はあった方が精神安定上いいと思います。
仕事の内容でいうと、やはり最初はとにかくたくさん「挑戦する」ことが重要。やりたくない事もやってみないと技術が伸びないし、やりたくないと思っていた事の中に、意外な楽しさや得意な事が見つかる場合もあります。誰かに頼まれて仕事として制作して世に出したという実績は強いですし、個人制作では得られない学びが多いです。

吉田:「自分だけにしかできないことを、きちんと自分の仕事にする」を実行していれば、そのうちおのずとやりたくないことはやらなくて済むようになると思っています。私も初期の頃は、クライアントさんが200倍、300倍喜ぶくらいの熱量で一つの作品を作っていました。そこで口コミを沢山頂いたことで仕事の総量が増えて、自分がやりたい仕事を選べる状態になってきた感覚はありますね。

猪瀬:ネガティブに考えてしまう人が多いのかもしれないですけど、「やりたくない仕事の依頼」って実はラッキーなんですよ。見積りを出す時、やりたい仕事だと「高いからって他の人に決まってしまったらどうしよう…」とビビってしまうけど、やりたくない仕事だったら断られても悲しくないので、安心して“アシスタントさんを雇えるくらい”大きな希望金額を提示できる。それを極めていくと会社になっちゃいますが、フリーランスとしても 「大きな金額の仕事を受けた事がある」という経験は一種の自信に繋がりま す。やりたくない仕事のオファーが来たら、自分の単価を上げるチャンスだと思った方がいいです。

■お二人の「#私はこんな仕事がしたい」

最後はこちら。このイベントのテーマ「#私はこんな仕事がしたい」についてお聞きしました!

猪瀬:グラフィックデザイナーを主軸に映像美術やイベント企画や司会など、やりたいことは割と自由にやらせてもらっているのですが、昨年は作詞作曲した楽曲をアイドルに提供させてもらったりと、新しいことにチャレンジできてとても楽しかったです。
実績にない事を頼んでもらえるのはすごく貴重なことだし有難いことで、今後も自分では想像していなかったような未知のチャレンジを続けていけたら嬉しいです。
趣味嗜好で言えば、音楽やアートなどポップカルチャーに関わる仕事はもっと増やしていきたいし、人前に出る仕事も増やしていけたらいいなと思っています。

吉田:元々絵を描くのは好きですが、これはとても孤独な作業。どちらかというと、人に見てもらったり、パブリックな所で人にいい影響を与えることが出来るからグラフィックデザインやアートが好きなんです。ただ、現在ウォールアートをやっていますが、アメリカ圏やヨーロッパ圏に比べ、やはり絵を仕事にしていくには日本はまだまだパイが小さすぎる。絵を仕事にしていくことと同時に、それが何故なのか、いい仕組みがまだ日本に来ていないだけなのか、などを調べて、何かしら日本に持ってくる事が出来ればと思っています。

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「#私はこんな仕事がしたい展」で行った8つのトークセッションについては、順次不定期にレポートを更新していきます。残りは一つ、お楽しみに!

Text:Shiho Nagashima

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